拝啓エンジニアサイブ

アフガニスタンでは、ドクターとエンジニアの社会的地位が他の職業に比べて高い。この二つの職業だけは「サイブ」という敬称と組み合わせて、尊敬の念を込めて「エンジニアサイブ」「ドクターサイブ」と呼ばれるのだ。敬意を込めた言葉なので、自分と対面して話している人の名前がどうしても思いだせなかった場合でも、「エンジニアサイブ」と呼べば失礼になることはない。このテクニックで何度急場を凌いだことだろう。

職に貴賎はないと思いたいが、どのような社会でも職業ごとに人々の尊敬の度合いが異なったり、一目置かれたりすることはあるだろう。そうした職業の社会的地位とでもいうべきものは、それぞれの社会ごとに異なるのだろう。それでは、その相違は社会の中でどのように決定されるのだろうか。

社会の中での職業の地位を決定する際に、社会の中で一番高貴だと考えられている価値への貢献度が高いということは重要だろう。先進国のように正義のある社会を目指している場合では、それを達成するための弁護士であるとか裁判官、ジャーナリストなどはある程度人々の尊敬を集めるかもしれない。また、人の生命を守る医師は多くの社会で地位が高いだろう。これは多くの社会で生命に高い価値を置いているという普遍な意味合いがあるかもしれない。

また、その社会で稼げる収入が高い職業というのも一目置かれるという意味では地位が高いと言えるだろう。日本で言えば、会社役員や企業家や弁護士や医師や公認会計士などがそういう職業に当たるのだろうか。

アフガニスタンでエンジニアの社会的地位が高いという事実は、アフガニスタンの社会においてどういう価値が重要視されているかということを雄弁に語っている。エンジニアにも種類があるだろうが、学校や病院やビルや空港や道路などを設計する人、建設する人が尊敬されるということは、アフガニスタンにおいては国家の発展というものがこうした物質的繁栄によって象徴されているということなのだろう。

反対に、弁護士や会計士や企業家やジャーナリストなどは、アフガニスタンにおいてはエンジニアやドクターに比べて社会的地位は低い。政府役人も同様だ。こうした職業に就いても高い収入を得られないという事が実際には大きな理由だと思うが、アフガニスタンにおいて国家の発展を象徴するものが正義や経済やガバナンスではないからだとも言えるかもしれない。少なくとも、人々がそのように物事を認識しているということは言えるだろう。

発展というものが座標軸上の左から右に延々と進んでいく直線運動なのかどうかわからないし、物質的繁栄という価値と精神的な豊かさという価値のどちらかに優劣をつける社会が真に豊かなのかも僕にはわからない。しかし、エンジニアサイブがエンジニアサイブでなくなった時には、アフガニスタンは現在とは別の何かに価値を見出す社会に移行しているのかもしれない。そんな日を少し夢見たりする僕がいる。

拝啓エンジニアサイブ。エンジニアサイブは今日もお元気ですか。ご家族はみな健康ですか。いかがお過ごしですか。拝啓エンジニアサイブ。またお会いする日を楽しみにしています。ごきげんよう。



2010年06月27日:Generalkenta

Comments

ゆうこさん:2010年07月07日

たぶん、パキスタンでいうサーハブのことだと思うのですが、ドクター・サーハブとか尊敬を込めて呼んでいます。あと、ハッジ・サーハブってのもありますよ~。マッカへの巡礼を経験したことのある、わりかし年上男性によく使うみたいです。確かに、こうした呼称からその社会における価値観が分かりますね。

kentaさん:2010年07月07日

ゆうこさん、

コメントありがとうございます!アフガニスタンでもハッジをハッジ・サイブと尊敬をこめて呼びます。察するに、サイブはサーハブと同じみたいですね。

実際はエンジニアでなくても、学士さえもっていればアフガニスタンではエンジニアサイブと呼ばれています。大卒というのが高い価値を持っているんですね。

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