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■旅行記

トルコ旅行記

エピローグ

 猫が朝の街を徘徊し、霧が昼の波止場を覆い隠し、かもめが夕方の到来を告げる、暗示に満ちたイスタンブールでの旅が終わろうとしている。 そこに住む人々は人懐っこく、日本に住んだ事があるないにも関わらず誰でも気さくに話しかけてきて、僕は一人旅の途中でも退屈することはなかった。 長い歴史に裏打ちされた伝統とモダンの入り混じる街並みは初めて訪れた僕にさえも郷愁と既視感を感じさせた。

 イスタンブールの街を歩いていると、このまま僕がやって来た場所ではない何処かへ連れ去られてしまうのではないかと思う事がしばしばあった。 もう少し道の途中で目を閉じていたら、僕はひょっとして猫が住む街に佇んでいたかもしれなかった。 あるいは、ボスポラス海峡を覆い隠す霧の中であと少し考え事をしていたら、僕の知らない国に辿りついていたかもしれない。

 そう考えると、イスタンブール考古学博物館の前の街路樹が綺麗なあの石畳みの並木道は、どこかとても遠い場所へとつながっていたのかもしれない。 もし、あのままあの道を歩いていたら、僕はカブールに戻ってきていなかったのかもしれなかった。 でも、僕はこうしてカブールに戻ってきた。猫の街にも行かず、霧の国にも辿り着かず、石畳の道の向こう側へも行かずに。それはきっと良かった事なのだと思う。

 アタトゥルク空港へ向かうシャトルバスの中で瞳を閉じた。街路樹の隙間から零れる柔らかい日差しを肌に感じながら、時間の感覚がないセピア色の世界を僕は二人で歩いていた。


pass


おしまい



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